エミリー・ロッダ『デルトラの伝説』あらすじ

 エミリー・ロッダ作の冒険ファンタジー小説「デルトラ・クエスト」シリーズ外伝『デルトラの伝説』のあらすじ。

『デルトラの伝説』について

 「デルトラ・クエスト」シリーズ本編に関係する世界設定を明かした外伝であり、デルトラ王国の歴史にまつわる伝説を描いた短編集。

 「デルトラ・クエストⅡ」シリーズからの登場人物・ジョセフが編集した本という設定。

デル城の図書室員に戻ったジョセフが執筆に取り組んでいる作品として、「デルトラ・クエストⅢ」シリーズ内に登場する。

デルトラ王国影の王国が誕生する前の様子から、『デルトラのベルト』が作られるまでのいきさつなどが19の短編で語られる。

『竜の地』『火と水の話』

 七部族の宝石が発見される前のデルトラの歴史。デルトラ王国における、有史以前の時代と言える。

『竜の地』と呼ばれ、危険な海に囲まれていたデルトラが、まるで海底火山の噴火のように、激しい大地や海の揺れに襲われる。しかし、すべてがおさまってみると、山や川が現れて『竜の地』は美しく生まれ変わり、地中からはのちにデルトラのベルトを飾る守護石も発見される。

『四人の歌姫』

「デルトラ・クエストⅢ」シリーズのベースとなっている物語。

ここに登場する「魔法使い」は、明示されてはいないものの影の大王の前身だと考えられる。デルトラ王国近海の島での話。

『魔法使いの話』

「四人の歌姫」に登場した魔法使いのその後。

「四人の歌姫」での失敗から逃れてデルトラに流れ着いた魔法使いが、トーラの街に近づいたものの排除されてしまう。魔法使いが、本編ではデルトラと影の王国の国境とされている山脈にまでたどり着き、山に潜んでいたならず者たちを手下にするまでの物語。

『竜の卵の話』

山脈に潜伏し、征服計画を練っていた魔法使いが、謎の生き物の卵を発見する。

この卵から孵った怪鳥の子孫がのちのアクババ、もしくは魔法使いがアクババの構想を持った瞬間だろう。

『ピラの笛の話』

「デルトラ・クエストⅡ」シリーズのベースとなる物語。ピラ三族が、例の魔法使いの手によって仲違いさせられ、さらに美しいピラの地を追われて地底世界に逃げ込むはめになるまでの話。

魔法使いが影の王国を手に入れた瞬間でもある。

『七匹のゴブリン鬼の話』

太陽の下で暮らせる土地を求めて、地底世界に追いやられたピラ人のうち七人が地上にやってくる。

「デルトラ・クエストⅡ」シリーズによると、七人はプリューム族の者たちだとされる。彼らは、プリューム族が持つピラの笛の先端を盗み持ってきていた。

七人はそれぞれ不幸な死を遂げるが、最後に死んだ者が持っていた笛の先端は、ジャリス族の騎士の手に渡る。この騎士は、『ジャリス族の騎士』内で登場するグリール、そしてグロック&グルス兄弟の祖先とされる。

『夢見のオパール』

はばひろ川近くの農場で生まれ育ったオパールという娘の物語。予知夢を見る能力を持っていたオパールは、ある日おそろしい悪夢を見る。

そう遠くない将来、現実のものとなって襲いかかる悪夢(影の大王による侵攻)について、オパールは街で訴えたが、聞き入れられることはなかった。そこでオパールは危機を救う鉄と火の男を探す旅に出て、たどり着いたデルで鍛冶屋の男と出会って結婚する。

オパールは初代デルトラ国王・アディンの祖先である。そしてオパールが育った農場にいたハチははばひろ川沿いに生息し続け、数千年後にはルーカス&スカール兄弟の母が営む果樹園でりんご栽培に用いられるようになったと考えられる。

『影の軍隊』

影の王国の手下が、デルトラ北部を襲撃しつづけ、ついに軍隊を送り込むまでの話。

ここでは、のちに影の憲兵ととってかわるであろう人造の兵士(グリーア兵)や、七羽のアクババが登場する。

『鍛冶屋アディン』~『魔法の街』

ここからは、「デルトラの書」にあったアディンの伝説がより詳細に語られる。

アディンの人となりから、宝石を集めるアディンと七部族たちの交わりが8つの物語として描かれている。

  • 『鍛冶屋アディン』
  • 『ジャリス族の騎士』
  • 『「恐怖の山」の小人族』
  • 『メア族との賭け』
  • 『アズールの弓使い』
  • 『亡霊の地』
  • 『ララド族の荒野』
  • 『魔法の街』

ジャリス族→トーラ族→小人族→メア族→デル族→平原族→ララド族→トーラ族(二度目)

という順番でアディンは各部族を訪ね歩く。ヒラやジャリアドなど、本編の時代には壊滅していた街の様子がわかる。

トーラ族はアメジストをアディンに引き渡すことを拒み、他の六部族で影の王国軍との決戦に挑むことになる。

『デルトラの戦い』

アディンのもとに七部族が結集し、影の王国軍を追い返した戦い。 デルトラのベルトに七つの宝石が揃った。

それまで『竜の地』と呼ばれていたデルトラの地が、各宝石の頭文字を取って「DELTORA」と命名されたと同時に、デルトラ王国が建国された。

『仮面のバラム』

「デルトラ・クエストⅢ」シリーズで登場した、仮面一座の源となる物語。アディンによって誕生したデルトラ王族に、影の大王の手が忍び寄り始めた時期。

影の大王がアディン死後そう間もない頃から再侵略の手を伸ばしつつあったことと、古くから同じ手段をとっていたこと(王が信頼する人物を裏切り者として排除する)がわかる。

「デルトラの伝説」書誌情報

  • エミリー・ロッダ著、神戸万知訳、「デルトラの伝説」、岩崎書店(2006)

 エミリー・ロッダ作の「デルトラ・クエスト」シリーズ外伝。本編では詳しく明かされなかった、デルトラ王国が誕生する前の出来事を中心とした短編集。「デルトラ・クエスト」シリーズ表紙のマーク・マクブライドによるさし絵も掲載。2006年9月刊、定価1300円+税。

 未邦訳はありませんが、関連シリーズ「勇者ライと3つの扉」と「デルトラ・クエスト」がつながる3つの短編をおさめた新版も、本国オーストラリアなどで2013年に発売されています。

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