デルトラ王国の食文化
デルトラ王国を彩る豊かな自然を、「食」の観点から考えます。
料理法、各地でみられる特徴や、食と料理にまつわるデルトラの歴史など。
「デルトラ・クエスト」シリーズのネタバレをふくみます。
デルトラ王国の食文化
主食
主食は、パン。時代や地域を問わず、どこでも食べられている。東西南北、庶民の食卓から旅の道中まで、デルトラ王国でもっとも身近な料理のひとつ。
デルトラの人々はパンにチーズやはちみつをつけ、木の実やりんご、干しぶどうなどと一緒に食べる。パンがメインディッシュになるのは主に朝食時だが、焼いた肉やシチューのつけあわせとしてパンを食べたり、昼食・夕食でもパンとくだもので食事をすませたりすることもある。
パンの見た目や作りかたには、地域ごとの違いがある。 比較的土地が肥よくな王国中央部の都市 チュルナイや、北東部の田園地帯に近いドールではやわらかなパンが食べられているが、荒涼とした『恐怖の山』の小人族が作るパンは平たく、南部のジャリアドでジャリス族が食べるパンはかたい。メア族は、飢えを防ぐお守りとして食パンのかたちをした飾りを身につける。
調理
時代を問わず、一番よくみられる料理法はシチュー。 『デルトラ王国探検記』執筆の旅でドランが訪れた『ミリーのシチュー・ハウス』やリスメアの宿屋『旅人の休息所』ではビーフシチューが人気メニューで、13代 リーフ王の即位直後にも、困窮したデル市民にシチューがふるまわれた。
シチューのほかには、お米や魚を使ったパイが作られることがある。パンやチーズもよく食べられていることから、デルトラ王国では、各地域の川や街道沿いに点在する農家から、小麦や乳製品がじゅうぶんに供給されているようだ。とはいえ、国中が大飢饉に見舞われていた11代 オルトン王~13代リーフ王の即位直後までの時期はこの限りではなく、手のこんだ調理ができるほどの食材を手に入れられない国民も大勢いた。
保存食としては、ぶどうなどの果物や肉、魚を干したもの、ビスケットやクラッカー、乾パンがよく持ち歩かれる。香辛料には国外からの輸入品の影響もあるようで、デルの市場で売り買いされている軽食や、西の『銀の海』付近の商船から届けられる品には、スパイスの効いた食べ物もある。国内では、北東部の五色平原でセロリやタイム、ウイキョウ、ミント、パセリなどの香草がよく採れる。
食材
川合い村などの農村では、牛や豚、鶏、七面鳥といった一般的な家畜の飼育が行われている。しかし、そういった家畜の肉がデルトラ王国全土で食べられているかどうかは不明である。北東部に生息するオニネズミやウナズキ鳥1(コックリネ)、五色平原ジカなど、デルトラ固有の生き物の肉を食用している地域もある。
野菜ではじゃがいもなどのいも類やたまねぎ、かぼちゃも食べられている。もっともよくみられる果物はりんごで、次いでぶどう、スモモ。食事のデザートとして果物が食べられているほか、ジュースやエネルギー飲料にも加工されている。
中西部のリスメア付近、北東部のララディン周辺、そして中央部の旧ヒラやチュルナイの近くの平原では農耕が盛んで、小麦、カラスムギ、とうもろこしなどの穀物が栽培されている。
酒類では、デルトラ王国建国のはるか前からエール酒がジャリス族の間で好まれていた。その後冒険家・ドランが記録を残した6代・ルカン国王の時代になると、エール酒はデルトラ王国中の宿屋・市場で提供されていた。
一般的な飲料は茶で、パンやサンドイッチなど、食事と一緒にお茶を飲む。
各地域の特色
特色のある地方の傾向としては、海沿いの街・ブルームでは、魚を使ったスープや魚肉のだんごといった海鮮料理が豊富である。また、平原族の中心都市として栄えたヒラの街は、料理が非常においしいことで有名だった。
ネズミの疫病によってヒラが滅亡したのち、生き残りによって作られたチュルナイの街では、かつてのヒラで培われた食文化の片鱗が伺える。チュルナイでは、専門の技術を持つ調理人が代々育成されており、砂糖を使ったケーキや果物の砂糖漬け、チョコレートなどの繊細な加工菓子が作られる。
娯楽と商業の街・リスメアでは甘さやしょっぱさなど味の濃い食べ物が好まれ、屈強な戦士であるジャリス族が暮らすジャリアドでは、大集会所や宿屋で食べ放題メニューが提供されていた。
魔法ですべてをまかなう街・トーラは、食に関しても一風変わった特徴を持つ。トーラの豪華な食事は、トーラ族の魔法で生み出される。このため、トーラの食べ物は、街の外に持ち出した途端すべて消え失せてしまう。
出典
- エミリー・ロッダ著、岡田好惠訳、「デルトラ・クエスト」全8巻、岩崎書店(2002~2003)
- エミリー・ロッダ著、岡田好惠訳、「デルトラ・クエストⅡ 2 幻想の島」、岩崎書店(2004)
- エミリー・ロッダ著、上原梓訳、「デルトラ・クエストⅢ」全4巻、岩崎書店(2004~2005)
- エミリー・ロッダ著、神戸万知訳、「デルトラの伝説」、岩崎書店(2006)
- エミリー・ロッダ著、神戸万知訳、「デルトラ王国探検記」、岩崎書店(2009)
- エミリー・ロッダ著、岡田好惠訳、「スター・オブ・デルトラ 1 <影の大王>が待つ海へ」、KADOKAWA(2016)