ダイアモンド 純潔と力|Diamond Purity&Strength

ダイアモンド(Diamond)は、純潔と力の象徴。ジャリス族の守護石。

『デルトラのベルト』のダイアモンド

 『デルトラのベルト』のダイアモンドは、とても大きく、氷や水面に射す光のように透きとおって輝く。

 デルトラ七部族のうち、戦いを好むジャリス族の護り石。影の大王の侵略で『デルトラのベルト』が破壊されたときには、ジャリス族の領土にある『いましめの谷』に運び込まれた。七部族の誓いでは、ジャリス族の代表として、グロックがダイアモンドをにぎった。

ダイアモンドの歴史

 ジャリス族はダイアモンドを黄金色の箱にしまい、部族の集会所のだんろの上に置いて保管した。ジャリス族のなかにも、ダイアモンドを盗もうとした者がいたが、かならず不幸が襲いかかった。

 アディンが『デルトラのベルト』を作るためにジャリス族のもとをおとずれたとき、ジャリス族は『テナ・バードソングの話』の言い伝えにしたがってダイアモンドを与えた。

 影の大王が『デルトラのベルト』を破壊してからの17年間は、『いましめの谷』のガラスの宮殿で、ゲームの賞品となったかのようなうわさがまことしやかに広まっていた。しかし、実際はにせものの石とすりかえられており、本物のダイアモンドは谷の番人がかくしもっていた。

 世界一大きく、世界一強い力を持つダイアモンドのうわさに引き寄せられたり、もしくは『いましめの谷』に迷いこんだりした者は、谷の番人とのゲームに挑むことになり、その大半が負けて『いましめの谷』の亡者に混じることになっただろう。ジョーカーは、謎を解いてゲームに勝ったが、ゲームの答えの内容に失望して賞品(にせのダイアモンド)は受け取らなかった。また、盗み出そうとした者もいたが、谷を出る前にかならず死んだと思われる。

 リーフ、バルダ、ジャスミンは、ダイアモンドを見つけた。そのため、『デルトラのベルト』の宝石を探す旅の道中では、ダイアモンドはあまり活躍していない。

力と純潔のダイアモンド

ダイアモンドの力

 ダイアモンドには、4つの力がある。

  • 力(強さ)を与える
  • わざわいを避ける
  • 不正な入手への報復
  • 真実の愛をもたらす

力(強さ)を与える

 力の象徴であるダイアモンドは、触れた者や持ち主が持つあらゆる力(精神力や体力、筋力)を、自然な状態より高める効果を持つ。

精神力が高まる

 ダイアモンドに触れると、気力が奮い立たされ、不安や苦痛に耐えることができるようになる。

 ダイアモンドを握ったり触ったりしていると、指先から力強さが流れ込むような感覚が起こり、勇ましさや挑戦心がわく。

体力が上がる

 ダイアモンドに触れると、体力が上がる。体が弱っていた場合は、体力が回復したり、抵抗力が強まったりする。

 病気や毒におかされているときにダイアモンドに触れると、体力が戻って不調が改善したり、体を動かせるようになったりする。ダイアモンドのおかげで免疫力が強まると、体に入った毒の力を弱めたり、ウイルスによる病をいやしたりできることもある。しかし、たとえば解毒の力を持つエメラルドとは違い、ダイアモンドのこの効果は、毒への根本的な治療にはならない。病や毒の力が強いと、ダイアモンドに短い時間触れていただけでは、完治しないこともある。

筋力の増進

 ダイアモンドは、触れた者の物理的な力の強さ(筋力)も増すことができる。

 腕力・脚力などが通常より強まるため、力づくでものを破壊したいときなどにこの力を役立てることができる。

リーフはドアを開けようとした。思ったとおり、鍵がかかっている。

一歩下がると、ドアをけりつけた。だがドアは開かず、ガタガタとゆれるだけだ。デルトラのベルトのダイアモンドをにぎりしめ、もう一度ける。すると、鍵がこわれ、ドアは勢いよく開いた。

エミリー・ロッダ作、上原梓訳、「デルトラ・クエストⅢ 4 最後の歌姫」、岩崎書店、2005年、p.55

わざわいをさける


 ダイアモンドは、自力ではどうすることもできない、疫病などの不幸から、身につけている人物を守ることができる。たとえば、ダイアモンドを身につけている人物は、目に見えないウイルスが媒介する伝染病への感染を避けることができる。

マスクをはずしたりしていなければ、ベルトのダイアモンドが、病からぼくを守ってくれただろうに、ぼくは油断して、さっさとマスクをはずしてしまった。きっと、もう感染している。遅かれ早かれ、発症するにちがいない。

――この病気は、おそろしく進みが速い――。

 ジョーカーはそう言っていたが、ぼくの場合は、そうでもないだろう。ダイアモンドの力で、しばらくは生かされる。

エミリー・ロッダ作、上原梓訳、「デルトラ・クエストⅢ 4 最後の歌姫」、岩崎書店、2005年、p.142

不正な入手への報復

 ダイアモンドは非常に魅力的な宝石だが、これを正当な持ち主から盗んだり、暴力をふるって奪い取ったりした人物は、おそろしい報いを受ける。

「わたしたちは、自分たちのためにダイアモンドを盗もうとしているわけじゃない。悪の手からとりかえし、あるべきところへもどすという正しい目的のために、盗もうとしているだけなんだから」

リーフは首を横にふった。

「いや、書かれているとおりだよ。ダイアモンドは暴力や不正をきらう。だから、正当な手段で手に入れることが必要なんだ。さもないと、おそろしいことになる」

エミリー・ロッダ作、岡田好惠訳、「デルトラ・クエスト 7 いましめの谷」、岩崎書店、2003年、p.141

ダイアモンドの報い

 ダイアモンドは、暴力と不正をきらう。この宝石を、不正な手段で手に入れようとすると、その報復として死にいたるか、少なくとも身の危険を味わうことになる。

 『デルトラのベルト』を破壊したプランディンや、『いましめの谷』の宮殿から盗み取ったネリダなど、暴力や窃盗によってダイアモンドを手に入れた者は、それからほどなくして不慮の死をとげた。また、『デルトラのベルト』を盗んだゼリーは、あやうく滝つぼに投げ込まれるところだった。

ネリダは、小川にあおむけに横たわっていた。二度と開くことのない目の上を、水がひたひたと流れてすぎる。

(中略)ジャスミンが考え考え言った。「事故だわ。小川をわたろうとして、足をすべらせ、頭を打っておぼれたのよ。ダイアモンドの魔力にやられたのね……」

エミリー・ロッダ作、岡田好惠訳、「デルトラ・クエスト 7 いましめの谷」、岩崎書店、2003年、p.190

 報復を避けるには?

 かりに、ダイアモンドを得る目的がよこしまなものではなく、たくさんの人にとって意義のあることであったり、現在の持ち主がダイアモンドを私欲のために扱っていたりしても、無理やり手もとに置こうとすることは許されない。

 ダイアモンドを所有するときには、その目的だけでなく、入手するまでの方法に筋が通っているかどうか注意する必要がある。持ち主から譲り受けたり、要求された取り引きに応じたりと、正当なやり方をとることで問題なくダイアモンドを手に入れることができる。

 アディンやリーフは、前の持ち主から正しいやり方でダイアモンドを受け取ったため、報復を受けることはなかった。

「このダイアモンドを盗んだ者には、かならず不幸が襲いかかる」グリールが答えた。「だが、おれたちは、おまえにはただでくれてやる。ダイアモンドは、おまえに強さを与えるだろう」

エミリー・ロッダ作、神戸万知訳、「デルトラの伝説」、岩崎書店、2006年、p.123-124

真実の愛

 ダイアモンドは、真実の愛が生まれるきっかけをもたらす。しかし、この力は『デルトラの書』に書かれているだけで、どのように発揮されるかはよく分かっていない。

ダイアモンドが登場する本(出典)

  • エミリー・ロッダ著、岡田好惠訳、「デルトラ・クエスト 7 いましめの谷」、岩崎書店(2003)
  • エミリー・ロッダ著、岡田好惠訳、「デルトラ・クエスト 8 帰還」、岩崎書店(2003)
  • エミリー・ロッダ著、上原梓訳、「デルトラ・クエストⅢ 1 竜の巣」、岩崎書店(2004)
  • エミリー・ロッダ著、上原梓訳、「デルトラ・クエストⅢ 2 影の門」、岩崎書店(2005)
  • エミリー・ロッダ著、上原梓訳、「デルトラ・クエストⅢ 4 最後の歌姫」、岩崎書店(2005)
  • エミリー・ロッダ著、神戸万知訳、「デルトラの伝説」、岩崎書店(2006)