エメラルド 名誉|Emelard Honour
Emerald
エメラルド(Emerald)は、小人族の守護石で、名誉の象徴。若草のように、あざやかでみずみずしい緑色。
『デルトラのベルト』のエメラルド
『デルトラのベルト』のエメラルドは、デルトラ北西部に住む小人族の護石で、名誉を象徴する。若草のように、あざやかでみずみずしい緑色に輝く。影の大王が『デルトラのベルト』を破壊したときには、小人族が住む『恐怖の山』に運ばれ、怪物・ゲリックの額にはめこまれた。
もくじ
- 『デルトラのベルト』のエメラルドの名誉
- 『デルトラのベルト』のエメラルドの力
- 鉱物エメラルドの特徴と世界の伝承(制作中)
『デルトラのベルト』のエメラルドの名誉
『デルトラのベルト』のエメラルドが象徴する名誉(Honour)は、優れた良心から生まれる、人としての品位や尊厳の表れのこと。
名誉は、人がその心のうちで育むものであって、他人の干渉や評価によって変わるものではない。つまり、動物も孤児も、金持ちも王様も、誰もがひとしく名誉を手にできる。
誰かを奴隷のようにしいたげたり、理不尽に傷つけたりすることが、その相手の尊厳を傷つけるのはもちろんだが、そうした行いは、何より自分自身を良心のかけらもない不名誉な存在におとしめる。名誉ある人なら、常に自分の信念にしたがい、人としてあるべきふるまいをするのだ。
「骨岬で得た教訓を思い出すといい」リーフはジャックの目をみてつづけた。
「どんなに脅迫されても、誇り高い人ならば、けっしてしないことがあるんだよ」
リーフはデルトラのベルトをひろいあげると、ふたたび腰に巻いた。
エミリー・ロッダ著、上原梓訳、「デルトラ・クエストⅢ 3 死の島」、岩崎書店、2005年、p.279
小人族の名誉
名誉を重んじる小人族は、与えられた恩を決して忘れない。恩知らずは不名誉だからだ。一度恩を与えられたからには、どこまでも忠実に従い、どんなことでも力になる。つまり、本当に名誉を重んじる人は、非常に信頼できる人でもある。恩のある相手に報いるのは、相手の名誉を尊重するだけではなく、その人自身がどれだけ誇り高いのかを示すことにつながる。
リーフは箱を開けた。なかには金色の矢じりが入っていた。
「みなさんには、たいへんお世話になった。もし、われわれのたすけが必要になったら、遠慮なく言っていただきたい。われわれ『恐怖の山』の小人族は、何をおいてもすけだちに参上しますぞ。で、これは、われわれの忠誠のしるしじゃ」
エミリー・ロッダ著、岡田好惠訳、「デルトラ・クエスト 5 恐怖の山」、岩崎書店、2002年、p.202
エメラルドの竜の名誉
デルトラの七種の竜にとって、互いのなわばりを侵すことは許されない。
エメラルドの竜にしても例外ではないが、ラピスラズリの竜になわばりを侵されても、報復のために侵し返しはしなかった。なぜなら、誇り高いからだ。怒りにかられてやり返すのは品性を欠くし、むやみに領地を拡大するためだけに、他の竜を攻撃するのはプライドに欠ける。
ただし、エメラルドの竜でも、正しいと思う目的があればよその領土に侵入することもある。守護石エメラルドを追いかけて、アメジストの竜のなわばりに入ったときのように。誇り高くあることは高潔だが、必ずしも社会のルールや、他人が言う善悪と重なるわけでもない。
誇り高さの負の側面-孤高か孤立か
「気位が高い」という言葉が持つイメージそのままに、小人族やエメラルドの竜は、正直言ってあまり付き合いやすいタイプだとは言えない。
小人族は、いつの時代も『恐怖の山』への侵入者を嫌ってきた。リーフたちやドラン、アディンなど、よそ者が『恐怖の山』に入って小人族の信頼を得ることもあるが、どちらかというと珍しい例だ。人を信頼することは、裏切られることと紙一重でもある。信頼すべきでない人をあやまって信頼してしまうこともある。これだと決めた人に深く信頼を寄せるからには、誰に心を許すかは慎重にならざるを得ないのだ。
また『四人の歌姫』の飢饉のとき、小人族の長のファ・グリンは、厳しい飢えを訴えながらも、デル城に助けを求めはしなかった。誰かに食べ物を恵んでもらって誇りを失うくらいなら、ファ・グリンにとっては飢え死にを選ぶほうがましだったからで、飢饉が解消されなければ、ファ・グリンは本当にそうしていたかもしれない。
このように、名誉は人のあり方を形作る大事なものだが、たとえば命など、名誉よりも大事なものを守るために、時には名誉を一旦脇に置いたほうがいいこともある。生きるためには、信念を曲げなければならないときもある。
「物乞い?」リーフは、思わずとびあがりそうになった。
バルダは、にがわらいをうかべると言った。
「人間にはな、必要なら、プライドをすてなくちゃならんときがあるんだよ」
エミリー・ロッダ著、岡田好惠訳、「デルトラ・クエスト 4 うごめく砂」、岩崎書店、2002年、p.41
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『デルトラのベルト』のエメラルドの力
『デルトラのベルト』のエメラルドは、何かを察知したときに色あせる効果と、触れたときに働く効果を2つずつ持つ。
色あせる効果
- 邪悪を察知して色あせる
- 破られた誓いを察知して色あせる
触って働く効果
- 解毒
- 痛みと潰瘍をいやす
色があせる効果
エメラルドは、邪悪や破られた誓いの前で、色あせて持ち主に知らせる力を持つ。
エメラルドの色のあせ方
くすんだ緑色にあせたり、石ころのような灰色に変わったりする。
邪悪を探知
エメラルドは、邪悪、悪の前兆を察知する力を持つ。
エメラルドが察知したのは、イカボッド、アクババ、グリーア兵、『四人の歌姫』とその番人、グルー、平原サソリ、『水晶』を通じて語りかける影の大王などである。邪悪な魔法による産物や、邪悪な魔法の影響を受けたモノ・生き物に反応することがわかる。
一方エメラルドは、オルの前では色あせない。
また、危険を察知する力を持つルビーも、エメラルドと同様の場面で色あせる。
破られた誓いを察知
エメラルドは、誓いが破られた場で色あせる。
誓いとは、何度でもやり直せるような、ちょっとした約束のことではない。エメラルドが察知する誓いは、世の中すべての人に向かって約束するような誓いや、人生や命をかけても守り抜かなければならないような、重い誓い(vow)を指す。
重い誓いを破ることそのものが、とても不名誉な事態につながりかねないことは言うまでもないだろう。誓いを立てた相手や、誓いを信じていた人を裏切ることになるだけでなく、時と場合によっては、誓いを破ったせいでたくさんの人の人生をねじまげてしまうこともあるのかもしれない。
そして、もしもそんな大事な誓いを破ったことを、誰にも気づかれないと思っていたとしても、自分自身は分かっているし、エメラルドも知ることができる。
触れて働く効果
解毒
エメラルドは、解毒の力を持つ。この解毒は、速やかで強力だ。毒に侵されている生き物にエメラルドをあてがうと、数分ほどで効果を表す。エメラルドは、心臓の近くに置くことで、最も強い力を発揮する。エメラルドがないときは、邪悪をかわすルビーや、体力を与える力を持つダイアモンドで毒をやわらげることができるが、あくまで力を転用しているのであって、エメラルドのように解毒に至るとは限らない。
痛みと潰瘍をいやす
エメラルドは、痛みと潰瘍をいやす。しかし、痛みと潰瘍をいやすためにエメラルドが使われた例はないため、詳しい効果のほどは不明。もしも解毒のためエメラルドを誰かの体にあてたとき、相手が潰瘍を持っていたり痛みを感じたりしていたら、それらも同時にいやすことができているだろう。
エメラルドが登場する本(出典)
- エミリー・ロッダ著、岡田好惠訳、「デルトラ・クエスト 5 恐怖の山」、岩崎書店(2002)
- エミリー・ロッダ著、岡田好惠訳、「デルトラ・クエスト 6 魔物の洞窟」、岩崎書店(2002)
- エミリー・ロッダ著、岡田好惠訳、「デルトラ・クエストⅠ 1 秘密の海」、岩崎書店(2003)
- エミリー・ロッダ著、上原梓訳、「デルトラ・クエストⅢ 1 竜の巣」、岩崎書店
- エミリー・ロッダ著、上原梓訳、「デルトラ・クエストⅢ 2 影の門」、岩崎書店
- エミリー・ロッダ著、上原梓訳、「デルトラ・クエストⅢ 3 死の島」、岩崎書店
- エミリー・ロッダ著、上原梓訳、「デルトラ・クエストⅢ 4 最後の歌姫」、岩崎書店
- エミリー・ロッダ著、神戸万知訳、「デルトラ王国探検記」、岩崎書店(2009)